03. 美味のそばにスギがあった。

 

日本固有の針葉樹であるスギは、本州、四国、九州と日本の各地に分布。吉野、尾鷲、天竜、魚梁瀬、日田、飫肥、智頭、秋田など産地として有名ですが、その各地でスギを素材とした建具や製品が生まれています。

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障子や板戸、酒樽、下駄、おひつ、桶、割り箸など、古くから生活の中で使われてきました。かつて天然秋田スギを使った桶樽づくりの名人を、能代港近くの工房で取材しました。能代はその昔、天然秋田スギの出荷港だったことから、この地で桶や樽を作ってきたといいます。すでに11代目で、12代目の息子さんも一緒に仕事していました。名人曰く、スギはモノになった後も生きていて、呼吸している。なので、おひつなどはご飯を入れたとき、水分を適度に吸って水っぽくならず、おいしさを保つ、ということだそうです。炊飯ジャーに入れっぱなしのご飯と、おひつに入ったご飯を食べ比べてみると明らかに違います。冷えてもおいしいのです。

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寿司飯を作る際に用いる寿司桶も、スギ材が使われていますね。味噌樽も酒樽もスギでした。そう考えると、日本の食生活にスギは欠かせない材料だったと言えます。いまではプラスチック製品に押されてしまっていますが、そのよさはやはり貴重。手作りで多少高価ですが、20年、30年と使え、痛んだら修理してまた使う。手入れを怠らなければ、世代を引き継いで使っていける。よいモノを、大事に大事に使ってきた日本の文化を、もう一度見直すべきではないでしょうか?

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01. スギは、縄文時代から身近な木でした。
02. スギといっても、硬軟十色。