02. スギといっても、硬軟十色。

 

 日本で一番多く植えられている針葉樹といえばスギ。漢字で書くと「杉」という字が一般的ですが、「椙」という字もあります。前者の字の右側にある三のようなちょんちょんちょんは、細かい針のような葉っぱがたくさん並んでいることを表しているのだとか。この漢字、実は中国では違う木のことを指していたようで、その木の正式名はコウヨウザン。広葉杉と書きますが、それを「杉」と呼ぶのでしょう。



 日本に生えている杉の仲間が中国にもあるそうですが、それは「柳杉」というそうです。そして、後者の字の右側にある「昌」は「盛ん」の意味で、盛んに伸びる木として作られた国字だそうです。因みに国字とは日本で作られた漢字のこと。峠とか畑なども日本産の漢字で、ほかにも働、凪、匂、杜、杢など1500字もあるとか。栃(とち)、栂(つが)、椛(もみじ)、椚(くぬぎ)、榊(さかき)、樫(かし)など木の名前に用いられている国字も多くありますが、使われなくなった字が多く、漢和辞典などから除けられる傾向にあるようです。そんなわけで、「椙」という字もだんだん馴染みが薄くなり、使われなくなったのでしょう。



 スギの木の切り口を見たことのある人は分かると思いますが、中心から外側に向かって色の濃い部分があります。その色も黒っぽいものや濃いベージュ、ピンクがかったベージュなど木によっていろいろ。育った場所や樹齢によっても違ってくるようです。この中心に近い色の濃い部分は、木材になった場合「心材」といいます。一方、皮に近い外側の部分は白っぽく、この部分は「辺材」といいます。また、「赤身」「白太」と呼び分けることもあります。樹齢の若いスギを製材すると、当然白太がでてきます。我が家の板の間はスギで葺いていますが、この白太が所々に混ざり、樹齢の若い木を挽いた板のようです。木目もあまり詰まっていず、柔らかい木であることが分かります。私は、この柔らかさ、暖かさが好きで、冬でも裸足でその感触を楽しんでいます。



 スギは、本州、四国、九州と日本の各地に分布し、その地ならではの性質をもったスギが各種あります。吉野、尾鷲、天竜、魚梁瀬、日田、飫肥、智頭などはその産地として有名ですが、スギというひとつの名前で、これほど性質の異なる材が取れる木はほかにはないでしょう。樹齢百年以上の目の積んだ赤身(心材)で、スギとは思えないほど堅く、家の土台に使えるようなスギもあるそう。スギというと柔らかい材と見られがちですが、一概にそうともいえないようです。そういえば世界遺産の島、屋久島の屋久杉はカチカチですよね。あれは、島自体が花崗岩で土壌が貧しく、厳しい自然条件の中で大量の雨によって長い年月をかけて育ち、油分の多い堅い赤身が出来上がったからだとか。日本固有の樹種であるスギ。そして、これほど多くの産地をもつ木も珍しいと思う。北から南まで各地のスギを集めて、全国スギ自慢大会をやったら面白いですね。

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01. スギは、縄文時代から身近な木でした。